読書記録 for me

読んだ本のまとめなどを書いていきます。

「長考力」(佐藤康光著)

こんにちは。

今日は将棋棋士佐藤康光九段による「長考力」という本についてです。

 

長考力 1000手先を読む技術 (幻冬舎新書)
 

将棋のタイトル戦では、お互いの持ち時間が8時間、2日にわたって戦うことがあります。ひとつの手を指すのに、1時間以上考えることもめずらしくありません。そんな棋士の、長く考える力について書かれたのが本書です。

しかし、僕個人としてこの本から学んだのは、佐藤九段の将棋と向き合う姿勢でした。対局に勝つことはもちろんですが、加えて良い棋譜(対局者の指し手を記録したもののことです)を残したい。そのために、対局中にある局面で没頭して考えたり、日々研究に励んでいるようだったのです。

インターネットの発達により、リアルタイムで対局の様子が見られるようになりました。佐藤九段も画面の向こう側の人として対局しているわけですが、自分が指し手を考えているときの様子を後で見て、その行動に驚くそうです。検討に没頭しすぎていて、とった行動を覚えていないのです。本文中には他の棋士の様子も描かれていますが、本当に身を削って対局に臨んでいる様子が伝わってきました。

自分がそこまで没頭して物事に向き合えているかというと、とてもそんなことは言えません。いい加減というか、他のいろんなことを気にしながらやっている感があります。

 

そして、もう一つ学んだこと。それは、過去の常識にとらわれない姿勢です。佐藤九段はもともと居飛車(作戦のひとつです)の本格派で、定跡をみっちり研究し、結果も残してきました。しかし、羽生さんにだけはなかなか勝てない時期が続き、何かを変える必要性を感じていました。以降、過去の常識を拭い去って、自分の研究を信じて他の棋士が驚くような新手を指し始めたのです。

もちろん、定跡を外れて新しい手を指すのは、リスクを伴います。そもそも定跡とは、過去の数多くの対局から導き出された「より良い形」なので、そこから自ら外れるのは勇気のいることです。また、新しい手を指して勝っても、すぐに研究されつくしてしまうこのご時世です。何だかしんどいことの方が多そうですが、自分のやりたい将棋を追求する姿勢は、非常に大切だと思いました。

 

全体を通して、将棋を嗜む僕には当然、興味深い内容でした。ただし、何となく話があちこちに行っている感じがしたのも事実です。そのため、「考える力」に興味がある方よりも、「棋士の考え方」に触れたい方の方が楽しく読める本だと思います。