読書記録 for me

読んだ本のまとめなどを書いていきます。

「人口減少と社会保障」(山崎史郎著)その5

おはようございます。

本日は、過去4回にわたって取り上げてきた山崎史郎さんによる「人口減少と社会保障」の最終回です。

 

 第5章以降は、これまでの内容を総括するものとなっており、今後求められる社会保障のあり方を実現するために、考えておかなければならないことが書かれています。大きく「人材」「住まい」「地域組織」に分かれます。

このうち、「住まい」についてはコンパクトシティ化や空き家活用が重要テーマなのですが、こちらについては積ん読の中にこれらをテーマにしたものがありますので、そちらで取り上げたいと思います。また、「地域組織」についても、仕事を通じて感じるところもありますので、別の記事で書こうと思います。

 

ということで、今回は「人材」にスポットを当てます。

介護分野は今、すでに深刻な人手不足の状況にあります。会議等で特別養護老人ホームグループホームを訪問するのですが、どこに行ってもギリギリの人数で回しています。また、スタッフの入れ替わりも激しいようです。人口減少社会といっても、当面、高齢者は増え続けて、働く人の数が減ることになります。そうなると、ますます介護人材の不足が容易に予測されます。

著者の山崎さんは、ICTの活用や横断的な資格制度、高齢者の参加について提言されていますが、このうちICTの活用と横断的な資格制度はなかなか難しいのではないかと思っています。

1.ICTの活用の難しさ

まずICT化について、導入にものすごいお金がかかると思われます。先日、医療や介護の専門職が集まる意見交換会のテーマがICT化だったのですが、仮に導入するとしても、すべての事業所が一体となって進めなければなりません。導入するシステムも、足並みの揃ったものでなければならない(同じ会社のシステムにしないにしても、互換性は必要)。大規模の事業所ならともかく、個人経営の居宅介護支援事業所など小規模な事業所には負担が大きくなります。ちなみに、その意見交換会でも「行政が補助金を出してくれれば…」という意見がたくさん出ていました。

そして、最大のネックが個人情報の取り扱いに対する不安感です。いくらセキュリティ対策がなされているとはいえ、完全ではありません。ハードルを下げるため、LINEの活用なども議論されましたが、やはり個人情報保護のことが課題として残りました。

参考までに、意見交換会では他にも、「ベテランの医師やヘルパーさんなど、IT機器の操作に不慣れな方がいる」「結局、紙媒体でやり取りすることも多いため、二度手間になるのではないか」といった意見が出ていました。まぁそんなことを言っていたら全然前には進みませんし、遅かれ早かれ、ICT化しないとますます回らなくなるのは明確なので、最低限必要かつ可能なところから手をつけていくべきだと個人的には考えています。先駆的に取り組んでいる事例がもっと広まればと思います。

 

2.横断的な資格制度の難しさ

高齢者関連では介護福祉士やケアマネジャーが、子どもの分野では保育士などの資格があります。また、僕も所持している社会福祉士という資格もあります。この他、さまざまな福祉関係の認定資格がたくさんある状態です。著者の山崎さんは、人材を効率的に配置するためには、分野を超えて人材が行き来しやすい仕組みがよいとして、ベースに共通課程を設けて、二階建て方式でそれぞれの専門分野に特化した内容を学べれば、共生社会に適した人材を育成できるのではないかとしています。

おっしゃている内容はよく理解できるのですが、これも相当な難作業になると思われます。既存の資格保持者へのフォローはもちろん、共通課程の作成やそれに伴う教育機関のカリキュラム変更、管轄をどこにするかの議論、国家資格・民間資格の棲み分けなど、クリアしなければならないことはたくさんあります。それだけ抜本的に考えを変えていかないと、人口減少社会は乗り切れないのかもしれません。

 

以上、計5回にわたって本書の内容をまとめてきました。不要に人をあおるような記述はなく、内容もバランスがよかったと思います。面白みには欠けるかもしれませんが、今の日本の置かれている状況や、これから迎える人口減少社会の問題点を知る上で、とても勉強になりますので、興味のある方は読んでみてください。

あっ、そういえば今日から令和だった!!(笑)