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「人口減少と社会保障」(山崎史郎著)その3

こんばんは!

今日は山崎史郎さんによる「人口減少と社会保障」の続き、第3章についてまとめます。

 

 社会保険制度を軸に展開してきた社会保障介護保険雇用保険など、これまでは個々のリスクに応じた制度設計がなされてきました。しかし、人口減少社会が待ち構える中、さまざまな事情で社会的に孤立するリスクのある人が増えてきました。

第3章では、社会的孤立を防ぐためにこれからの社会保障制度に求められる視点を、「取り込む」「つなぐ」「強める」という3つのキーワードを用いて説明しています。

 

・「取り込む」

正規雇用者は正規雇用者に比べ、健康保険や雇用保険などの面で不利であることが多くなっています。非正規雇用者が安心して暮らせるようにするにはどうすればいいかが、「取り込む」で語られているテーマです。著者の山崎さんが考える方策は次の3つです。

  1. 正規雇用者の正規化
  2. 職域保険の適用拡大
  3. 税方式の導入

しかし、単に税方式にして多くの人から分け隔てなく財源を集めても、設けられる給付が広く薄いものになり、本来手厚い保障が必要な人にとっては不十分な給付となってしまうおそれがあります。また、社会保険制度がこれまで果たしてきた役割も大きく、拙速な方針転換は国民の不安をあおることになります。しかし一方で、現行の社会保険制度を中心としたやり方では、非正規雇用者やそもそも働くことがしんどい状況にある人にとって保険料の支払いもたいへんで、中には未納状態にある人もいます。以上のことから、「取り込む」というテーマでは雇用政策からのアプローチが王道で、正規化が求められる方向となります。

 

・「つなぐ」

ここでは主に生活困窮者自立支援事業が取り上げられています。経済的に困窮することになった原因は複合的であることが多いため、そこから脱却するためにはそれぞれの人の状況にあった支援が必要となります。また、生活に困っている人はパワーレスな状態に陥っていることが多く、支える制度やサービスはあってもそこにつながらないケースが多いのです。こうした支援は「仕事に就ければ終わり」という性質のものではなく、どういったことに困っているのかを時間をかけて聴き取り、家庭の問題や職場での定着なども含めて包括的、継続的に関わっていくことが求められます。

 

・「強める」

みなさんは「エンパワーメント」という言葉を聴いたことはありますか?本書では「当事者が本来持っている力に自らが気づき、現状を変えていく意欲を高めるよう支援するとともに、それを実践するための環境を整えていく」(p109より引用)と定義されています。ただパワーレスな状態にある人に対して「頑張って!」と励ますだけの概念でないことはおわかりいただけると思います。

例えば、ひきこもりの状態にある人が社会で適応するには、非常に細かなステップを長い時間かけて登っていくことになります。時間に間に合うよう身支度をするとか、仕事場に行ったらまずあいさつするなど、基礎的な生活習慣から身につけなければなりません(もちろん、もっと前にもさまざまな段階があるでしょう)。ここで求められるのは、福祉分野と雇用分野が連携することです。相談のような福祉的な支援と、職場訓練のような雇用面の支援とが融合し、サポートしていく体制の構築が求められます。

 

以上、3つの視点で社会的孤立を防ぐにはどうすればよいかがまとめられていましたが、ひとつ忘れてはならない存在を山崎さんは挙げていました。「地域」です。地域での人とのつながりや、さまざまな活動による受け入れなどが、社会的孤立の防止をより効果的に進めるためのポイントになります。社会的孤立のリスクの高い人が安心して暮らすためには、周囲の人の理解や協力が欠かせません。地域でセーフティネットをつくることが、上記3つの内容を広くカバーするものとして求められます。