読書記録 for me

読んだ本のまとめなどを書いていきます。

「人が死なない防災」(片田敏孝著)その1

こんばんは。

今日は、群馬大学教授で、広域首都圏防災研究センター所長の片田敏隆さんによる「人が死なない防災」という本についてまとめます。

人が死なない防災 (集英社新書)

人が死なない防災 (集英社新書)

 

2011年3月11日に東日本大震災が起こりました。

当時、著者の片田さんは多くの地域で防災教育に取り組んでおり、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県釜石市もそのうちの一地域でした。

釜石市では1000人が犠牲になったのですが、学校の管理下にあった子どもについては、そのうちの99.8%が助かったのです。このことは「釜石の奇跡」として新聞等にも取り上げられたそうですが、著者の片田さんからすれば、避難をきちんとすれば津波による被害者はゼロにできるという想いもあったため、「研究者としては敗北」と述べています。

まず印象に残ったのは、防災における最優先課題についてです。東日本大震災以降、人と人との絆が大切と叫ばれるようになりました。しかし、絆が最優先課題かというとそれは間違いで、そもそも絆が生まれるためにはまず生き延びなければなりません。そのため、防災における最優先課題は、本書のタイトルにもなっているように、人が死なない防災を推進することにあります。

防災対策は100年確率で練られています。つまり、100年に1回起きる大災害にも耐えられるだけの対策をするということです。三陸地域に明治時代に起こった津波に耐えられるだけの10mの高さの巨大な防潮提が建てられたことが事例として挙げられています。

しかし、実際には東日本大震災において防潮提の近くで暮らした方もたくさん亡くなったそうです。それはつまり、東日本大震災による津波は、100年に1回起こると想定されていた津波より大きなものだったのです。

ここで、防潮提の近くで暮らす人たちの間には、「あの防潮提があるから大丈夫」という感覚がどこかにあって、逃げようとしない人が多かったのではないかと片田さんは分析しています。防災対策として建てたものが、かえって住民の防災意識の低下を招いてしまった可能性があります。このことは、「自分の家はハザードマップにおいて危険区域に入っていないから大丈夫」と誤解してしまうことにも通ずるでしょう。

以上のことから、片田さんは子どもに向けて防災教育をしていくことにしました。子どもに正しいことを伝えて、親世代、さらには高齢者にも防災意識が広がっていくことを狙ったのです。

第1章の最後の方に、片田さんが訴える「避難の三原則」が書かれています。

①「想定にとらわれるな」

津波警報ハザードマップを無条件に信用しないということです。自然災害は、我々の想定を超えてくるから「災害」になるのです。

②「最善を尽くせ」

時に自然は人間ではとても太刀打ちできないほどの猛威をふるいます。自然と向き合っていく上で、大切にしなければならない考えです。片田さんはさらに、「最善を尽くしても、それでも死ぬかもしれない」と付け加えています。

③「率先避難者たれ」

他者を助けるには、まず自分が生きなければならない。だから、危険と感じたらまずは逃げるということです。

東日本大震災のときも、釜石のある中学生が「逃げよう」と言い出したことがきっかけで避難を開始し、そこに小学生やお年寄りも加わって一斉に高いところまで避難をし、本当にギリギリのところで難を逃れました。なお、本文中にはこの一斉避難の様子が文章と写真によって説明されていますが、本当に圧巻です…(この部分だけでも本書を読む価値はあると思います)。

逃げることに対しては集団心理、恥の心理なども絡んできて、厄介な問題です。まして、多感な子どもならなおさらでしょう。しかし、そこを乗り越えて、率先して逃げ始めた子どもがいたからこそ、多くの方の命が助かったわけです。

普段の記事よりも文字数が多くなった気がしますが、これでもまだ本書の半分くらいをまとめたものです。仕事柄というのもあるかもしれませんが、非常に多くの気づきが得られています。続きは次回の記事で書きます。